呪いと祝福の短編

短編を書きました。

これは私のある思い出に正面から向き合ってみた小説です。
というのを言ってしまうと、読み口が変わってしまうというかつまらなくなってしまうかもしれないのでよろしくないのですが、まあこんな地味なブログまで読みに来る奇特なひとは許してくれるだろうしという甘えもあり、ついでに今回の話はなんの色眼鏡なしでも読んでみれば今までの短編と手触りが違うわねと感じられるところがあるであろうから、いいかなと思って言いました。

向き合ってみた、とは言っても、そのままの出来事と心情を書いたわけでは勿論無く、物語のかたちにできるまでに消化してみた、という感じです。

この人魚は死神ではありませんし人の死を望んでいるわけではないけれど、どこかで同じ事故が繰り返されることを望んで待っているような、呪いに近い感情も持ち合わせています。人の心と人魚の心の間で揺れているし、死にゆく人に手出しは出来ない。

相手が魂になってはじめて交流が出来る。その魂の行く先も、絶対の祝福を保障してあげることは出来ない。落ちる人を見守り、祝福がありますようにと願いながら、魂を案内する。無力な存在です。

魂として落ち着く先もなく、『彼』を探すために案内人を続けるしかない人魚は、無数の死をただ待ち、魂たちを送り届けながら、滅びることも出来ず在り続けるのだろうと思います。人の心と人魚の心の間で揺れながら。



いくら書房

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