エブリスタを久々に更新。掌編です。3分くらいで読めます。読んで!
エブリスタでは月に二度ほど小さなコンテストをやっていまして、三行から気軽に参加できるよ、上限の文字数は8000字だよ、というものです。毎回テーマが設定されます。
今回のテーマは「芽生え」。芽生えをテーマに書き始めたはずが、途中テーマがどこかに行きそうになり、最後に軟着陸した形になります。
このコンテスト、気軽に参加できるのと、何か短いの書くかあというときにきっかけになるので良いです。尚、考え初めたら8000字には収まりませんね、ということになり別の中編ネタとしてストックされることも5割超の可能性でありますがそれはそれでネタストックが増えるので良しとしてます。
さて、ここからは今回の話をどう書いていったのかというお話です。
いつもとは少し違う書き方になったので覚書とします。
0.
「芽生え」というテーマでまず思いつきやすいのは、恋愛ものでしょう。恋の予感をにおわせて終わるのに8000字はちょうど良い。しかしここで問題があります。エブリスタはキュンな話を書かれる猛者揃いなのです。そして私はというと、下手なのです。キュンが。
1.そこで感情の萌芽という点はそのままにキュン以外を考えます。私は怒りの人間です。つねに怒りを抱えているような人間です。そこで怒りと芽生えとに焦点をあてて、詩未満のものをまず書きました。これです。
芽生える そこには怒りがある
芽生える そこには自覚がある
芽生える そこには種がある
運ばれてきてそこに根付くとき
種には種の意思があるのかそれは近代的意思といえるもの
植物の環世界がある
アルゴリズムにしたがって動いている世界
あなたに植わった種がそのアルゴリズムによるものなのか
種が植えられる土壌たる私はあらゆる世界のとの関係によりその土を肥やしている
あなたにとってわたしにとってそれは不都合な自分の汚点であったり忘れたい過去であったりする
しかし土は堆積する
かたく、岩だらけで、木の根が頑固にはり、乾きひび割れた土地でいられなかったのは
あなたの責任ではない
責任の責任の責任の責任を辿っていくと、それは世界の無限性にたどりつく
世界は無限である
無限の彼方からあなたを耕される土地にするものがやってくる
ここを住処と種が飛んでくる
ひらひらと、風をうける飛行機の羽のようなものもある
綿毛をつけたものもある
房のなかでげんかいまでに膨らんで、ぱちんと弾けてそこいらじゅうに撒き散らされるものもある
可愛らしくあなたを囲い慰める鳥がはこぶ
ディズニーのおとぎ話のヒロインは鳥に好かれる
あらゆる小さなものに好かれる
ネズミにも好かれる
ネズミは菌を運ぶが、きっと種もはこんだろう
このとき私は白雪姫やシンデレラを思い出している
あなたは世代がすこし違うだろか
運ぶものは善悪の外にある
すべて直接的に作用してくるものは単体として善悪の外にある
それだのにあなたは
2.
なにを言っているのか分からない詩未満のなにかが出来上がったところで、もう少し自分の怒りと悔しさの根っこを探ろうという気持ちになりました。そして自分史のようなものを、思春期のころの特別嫌だった出来事を中心に、自分用のメモ書きとして脳みそから記憶をそのまま取り出すように心がけて推敲など考えずただ書き連ねていきました。そうすると次から次へと、よくこんな細かいこと覚えてるな、という些細な嫌なことまで出てきます。自分でもびっくりです。このメモは人様に見せる段階のものではありませんし、そのまま話にはしません。出来事をそのままお話にされても困ります、読む人も私も。だから、頭の整理と、使える要素・エピソードが後で見つかれば儲けものくらいのメモです。
その中で、辛いサンドイッチが出てきました。この時わたしは辛いサンドイッチを食べ続ける側だったわけですが、辛いサンドイッチを作り続ける人の側から見てみたらどうなるのだろうという発想が生まれました。そうしたら恨み言にならないとも思いました。
3.
さてどう料理するかはわかりませんが、使いたいエピソードは見つかりました。掌編でまとめると考えたときに、読後感は良くあって欲しいという気持ちになりました。読後感の悪い話も好きですが、この話は私のケアにもなるという予感があったので、そういった気持が「芽生え」たのでしょう。
視点はぼく、相手として同居人のきみ、ぼくときみの関係は明確にしない。そしてきみの性別も明確にはしないということを決めました。これは私が丁度、私が共生についての本を読んでいるところで、広い概念で人間が一緒に暮らすということをとらえたかったからです。
4.
もう一つ、ASD当事者研究の本(作者も当事者である)を読んでいました。ぼくの視点を描くにあたり、また、私が書き散らした自分史恨み言メモの出来事を分析をするうえで、多大に影響を受けています。
あとは最近納豆の辛子をお気に入りのスカートに飛ばして焦って洗ったどうでもいい経験なども、辛子繋がりで出てきました。この辛子がシミになる事件を、きみとぼくの関係がすこしずつ変わっていく契機に使えないかと思いました。きっかけは小さい方が、「芽生え」という感じがあるかなと。
5.
序破急形式でプロットを作ります。
ここまで出来たら本文は3500文字くらいなので、すぐに取り掛かります。準備期間はそれなりに長いのですが実際に書くのは2時間くらいでしょうか。「芽生え」というテーマにどこまで沿えているのかは不安が残りますが、私としては面白く、また得るもののある執筆体験でした。
以上で覚書は終わりです。
蛇足として以前「初めての」というテーマで書いた掌編も貼ります。これもキュンが無理なので「初めて一人でお風呂に入る女の子」の話になりました。確か色々要素を組み合わせてパズルのようにして書いた記憶があります。
明るい話ではないですが、気に入っています。
0コメント