今更文學界5月号の話で恐縮です。
特集の「幻想の短歌」、対談二本と口語短歌リズム論を読めたので感想のメモ。
対談のうち一本は俳人三名歌人一名での「短歌の幻想、俳句の幻想」というテーマでこれが特に興味深かったので、それについて書きたい。というのは私がいま俳句に興味があるからなのですが。あと漢詩も、というのは関係ないからおいておくとして。
俳句は最終的に「物」に着地していく、そういう切り取り方をするもので、写景的である。一方で短歌には「詠む人」の感情や視点がある、自我の詩である、という話があって、これは非常に納得しました。
また十七音という短さで、しかも景色や物をぽんと出すようにして終わる俳句で、イメージを広げる、または固定するうえで重要な役割を果たすのが季語の共同幻想性であるというのも、なるほど〜と。そして季語を知る上での歳時記。これもある程度のレベルで前提として共有されている。
で、現実を写生していく俳句により幻想が生まれるにはどういった仕組みが働くのか、ということについて、実際に幻想的な俳句をひきながら対談が進んでいきます。写生していく中で、現実の秩序が乱れる瞬間を切り取ると、世界そのものが非現実的に感じられるという一種騙し絵的な手法だとか、色々、論じられていきます。
それでまとめとして、俳句の技法や構造のなかにそもそも幻想を生む回路が備わっているのではないかという、おもしろい結論になるんです、この対談。写実と幻想は裏表の関係で、写実をつきつめるとあるところで幻想にくるりと反転するような、そういう力学が働く場面がある。みたいな話になります。
これはもう読んでくれ、いい特集だから、としか言えない。なぜなら自分もどれだけ理解できてるかわからんから適当にまとめられないんですよ。今回引いてるのは、一部分だけ、私なりに「分かる〜」となった部分です。読んで!他の特集もまだ読みきれてないから分からないけど短歌も歌人のエッセーも載っているし、先にあげた口語短歌リズム論もよかったから!あと年森瑛の「N/A」(まだ読めてない)も載ってるから、お得だよ!
最後に私がいいな〜と思った幻想的な俳句をあげておきます。
初夢のいきなり太き蝶の腹 宇佐美魚目
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